弁護団・原告団の活動内容

基本合意成立までの取り組み

【集団予防接種によるB型肝炎ウィルス感染の経緯】

全国B型肝炎訴訟は,幼少期に受けた集団予防接種等の際,注射器が使い回しされたことによりB型肝炎ウィルスに感染した患者の方々を救済するために,国に対し損害賠償を求める集団訴訟です。

B型肝炎ウィルスの持続感染者数は,全国で120万人以上。その中で,集団予防接種による感染被害者は45万人いると言われています。
1948(昭和23)年,すべての国民・住民に対し予防接種を義務付ける予防接種法が制定され,予防接種が全国で施行されました。以降,国の指導により,すべての国民・住民が保険所や学校などで予防接種を受けてきました。

国は,予防接種法が制定された1948(昭和23)年ころには,注射針・注射筒を使い回すことにより血清肝炎(B型肝炎)に感染する危険性を知っていました。

しかし,国は,このような危険性を認識しながら,注射器の使い回しをやめるよう指導することなく,1988(昭和63)年ころまで,集団予防接種において,注射針・注射筒の使い回し(連続使用)を放置してきました。

【札幌での提訴】

1989(平成元)年,5名の原告が国の責任を追及するために札幌地方裁判所で訴訟を提起しました。
そして,2006(平成18)年6月16日付最高裁判決により,原告ら5人がB型肝炎ウィルスに感染した原因は集団予防接種にあるとして,国の責任を認めました。

しかし,その後も国はB型肝炎患者に対し,具体的な救済措置を取ろうとしませんでした。

【全国へ波及する訴訟】

そこで,予防接種によってB型肝炎に感染させられた患者の被害回復や,患者が安心して治療を受けられる恒久対策を求めて,全国各地で原告団・弁護団が結成され,訴訟が提起されました。

【基本合意の成立】

私たちは,訴訟提起後,訴訟活動に加えて,全国各地での街宣行動や国会議員への要請行動,地方議会での決議要請,厚生労働省前での座り込み,署名活動等を行い,被害救済を訴えてきました。

このような中で,原告団・弁護団と国との間で協議が行われ,2011(平成23)年6月28日,国は正式に謝罪し,被害者を救済するための基本合意が成立しました。

そして,これに基づいて,平成23年12月に,「特定B型肝炎ウィルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が制定され,平成24年1月13日から施行されています。

【私たちの活動】

B型肝炎訴訟は,この基本合意及び特別措置法に基づき,国に対し,B型肝炎にり患した個々の被害者の救済を求める訴訟です。

私たち北陸弁護団は,北陸三県(富山・石川・福井)の患者の方々を救済するために結成され,各地の原告団・弁護団と連携し,この訴訟を追行するとともに,基本合意の成立をはじめ,国に対し,恒久的な被害救済や,今回の予防接種禍の真相究明,さらには,再発防止のための施策を求めて活動してきました。また,広く社会一般に向けて,B型肝炎についての理解を深めるための活動を行っています。

恒久対策班の具体的内容

平成23年6月、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と国との間で「基本合意書」が締結され、これをもとに同年12月「特定B型肝炎ウィルス感染者給付金等の支 給に関する特別措置法」が制定されました。

しかし、これによって救済されることができるのは要件を備える事が出来る患者の方々のみであり、全てのウィルス 性肝炎患者のうち一部の方々にすぎません。

また、和解が成立した原告も和解金は得ても被害がなくなるわけではありません。将来の症状の悪化、治療費の負担、及び偏見差別による被害やこれらへの不安はなくなりません。

このようなことから、国と和解し、解決金を受け取ることのみを目標とするのではなく、全てのウィルス性肝炎患者が安心して暮らせる社会の実現を求めて活動しています。

このような活動を恒久対策活動と呼んでいます。

国も、基本合意書において、「国(厚生労働省)は、本件感染被害者を含む肝炎患者等が、不当な偏見・差別を受けることなく安心して暮らせるよう啓発・広報 に務めるとともに、肝炎ウィルス検査の一層の推進、肝炎医療の提供体制の整備、肝炎医療に係る研究の推進、医療費助成等必要な施策を講ずるよう、引き続き 務めるものとする。」と約束しています。

恒久対策の目的を実現するために、毎年、厚生労働省の大臣との間で、より良い肝炎対策制度実現のための協議を行っているほか、北陸三県(富山・石川・福井)による肝炎対策がより充実したものとなるよう活動を行っています。

真相究明班の具体的内容

原告団・弁護団は,どうして,国は,危険性を認識していながら,注射器の使い回しを放置し,B型肝炎ウィルスの感染拡大を許してしまったのか,その真相を究明し,究明された真相に基づいて,再発防止策を策定するという活動を行っています。

この活動は,2011年6月28日に,国が,原告団・弁護団との間で,「国(厚生労働省)は,集団予防接種等の際の注射器等の連続使用によるB型肝炎ウイルスへの感染被害の真相究明及び検証を第三者機関において行うとともに,再発防止策の実施に最善の努力を行うことを約する」と約束したことに基づいています。

厚生労働大臣は,この約束に従い,「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」(以下「検討会」といいます。)を開催し,原告団・弁護団もこの検討会に委員を派遣して参加し,真相究明・再発防止のための活動を行ってきました。

この検討会では,約1年間にわたって,国等が保管する膨大な文献・文書等の調査,国・地方自治体関係者からの聴取調査,医療関係者からの聴取調査,被害実態調査等の調査が行われました。そして,この調査結果に基づいて,2013年6月18日,再発防止策の提言が取りまとめられました。

取りまとめられた提言は,厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034y5f.html)でご覧になることができます。

提言は,再発防止に向けての国の姿勢について,「国は,国民の生命と健康を守ること,そしてそれを通して個人の尊厳と人権を守ることを最大の使命として,厚生労働行政に全力を尽くすべきである」(提言48頁)とし,先進知見の収集と対応,事例把握と分析・評価,現場への周知・指導の徹底など現在の体制の充実を求めました。また,予防原則の徹底が不十分であったこと,国の体制と体質に問題があったことを指摘し,「省としてこれまでの組織・体制の問題点を洗い出し,十分な改善策を講じること」を求めました。さらに,再発防止策を全うするための組織のあり方の議論を続ける場を設ける必要があると指摘しました。

我々原告団・弁護団は,この提言で終わりではなく,さらなる真相究明・再発防止に向けて活動を行っていきます。

教育啓発班の具体的内容

私達は、B型肝炎患者の恒久対策の一環として、B型肝炎患者に対する不当な差別や偏見をなくし、B型肝炎患者がその人らしく、のびのびと生活できる社会になることを目指して活動しています。

B型肝炎という病気は、その病気がどの様に感染して、どの様な症状がでるのか、また感染後どの様な治療がされたりするのかという点について、社会では十分に理解されていないと思われます。それ故、「B型肝炎」という言葉だけが独り歩きして、例えば、B型肝炎は空気感染するかもしれないとか、一緒に日常生活を送っていたら感染するかもしれないとか、不正確な情報をもとに不要な差別や偏見が生じている場面があります。

私達は、B型肝炎とはどのような病気なのか、B型肝炎患者がどの様な状況のもとで生活しているのか等を、各地教育機関や医療機関を中心に、「B型肝炎患者の生の声」を伝える講義を実施することによって、社会の皆様へ正しい知識を普及し、また患者の心の声を知ってもらうことによって、差別や偏見の解消を目指しています。

この様な活動は、約2年程前から日本全国で一致団結して取り組まれている活動であり、これまで約70件を超える医療機関や教育機関において講義が実施されてきました。当原告団・弁護団においても、北陸3県にある大学や高等学校を中心に、既に複数件の講義を実施しており、概ね有意義であった旨のご感想をいただいております。

B型肝炎の治療等に伴う経済的な困難の解消のみでなく、その「心の痛み」への理解も含め、B型肝炎患者が当たり前の普通な生活を過ごせる社会が実現されるよう、熱意をもって活動しております。

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